Missile Encyclopedia
ミサイル図鑑
弾道・巡航・極超音速・空対空・地対空・対艦・戦術。 世界の主要ミサイルを写真とスペックで分類整理しました。 数字は各国公開情報・防衛白書・FAS・IISS Military Balance の概数で示します。 相手国の表記は中立的に、煽り表現を避けて記述します。
0. そもそも「ミサイル」って?
一言で:「自分で目標を追いかける、誘導付きの飛び道具」。
ロケットは燃料を燃やして飛ぶ「乗り物」。ミサイルはそのロケット(または別エンジン)に誘導装置と弾頭を載せた「兵器」。 飛び方・射程・誘導方式の違いで多くの種類に分かれます。
弾道(バリスティック)
ロケットで打ち上げ、宇宙空間に出てから落下。射程が長い。マッハ 10 超になる物も。
巡航(クルーズ)
低空を「飛行機」のようにジェットエンジンで飛ぶ。レーダーに見つかりにくい。
極超音速
マッハ 5 以上で機動する新ジャンル。 既存の防空網では迎撃が難しいとされる。
誘導方式
レーダー / 赤外線 / GPS / 慣性 / 画像 など。 用途と目標に合わせて使い分け。
射程の目安
短距離(SRBM): 1,000 km 未満 /中距離(MRBM): 1,000〜3,000 km /準中距離(IRBM): 3,000〜5,500 km /大陸間弾道ミサイル(ICBM): 5,500 km 超。 INF 全廃条約(米露、2019 年に失効)の基準値が由来。
1. 弾道ミサイル
一言で:「ロケットで宇宙まで打ち上げ、落下の勢いで叩く長距離兵器。」
ブースター(ロケット)で大気圏外まで上昇 → 慣性で落下。短距離(SRBM)・準中距離(MRBM)・中距離(IRBM)・大陸間(ICBM)に分類されます。 ICBM は核弾頭運搬を主目的に開発された経緯があります。

U.S. Air Force / Public Domain
ミニットマン III(LGM-30G) 🇺🇸
弾道 / 配備 1970
米空軍の地上配備 ICBM。1970 年配備で改修を続けつつ核戦力の柱を担う。サイロ式で米本土に約 400 基配備されているとされる。後継の LGM-35A センチネルへの世代交代を計画中。
Wikimedia Commons / CC BY-SA
DF-26(東風 26) 🇨🇳
弾道 / 配備 2016
中国人民解放軍ロケット軍の中距離弾道ミサイル。通常・核両用とされ、移動式の発射機で運用。対艦弾頭型もあるとされ「グアム・キラー」と通称される。
火星 17(Hwasong-17) 🇰🇵
弾道 / 配備 2022(試験段階)
北朝鮮が 2022 年に試射を公表した大型液体燃料 ICBM。複数の弾頭を搭載できる多弾頭化(MIRV)の可能性が指摘されている。発射台ごと運ぶ移動式 TEL に搭載され、機動展開を志向。

U.S. Army / Public Domain
ATACMS(MGM-140) 🇺🇸
弾道 / 配備 1991
米陸軍の戦術短距離弾道ミサイル。MLRS / HIMARS から発射。ウクライナ侵攻支援で供与され、後継の長射程精密誘導弾 PrSM への切り替えが進む。
※ 出典: 防衛白書 / FAS / IISS Military Balance 2024
2. 巡航ミサイル
一言で:「飛行機型のジェット推進。低空を這って目標まで届く。」
ターボジェット / ターボファンエンジンで低空を巡航。 地形を辿って飛ぶ TERCOM や GPS で進路を補正し、レーダーに発見されにくいのが特徴。 速度は遅いが命中精度と隠密性で評価されます。

U.S. Navy / Public Domain
トマホーク BGM-109 🇺🇸
巡航 / 配備 1983
米海軍を代表する長距離巡航ミサイル。湾岸戦争以降の主要紛争で多数発射されてきた。日本も Block IV / V を最大 400 発購入する方針を示し、反撃能力の柱と位置付けている。

Wikimedia Commons / CC BY-SA
ハープーン RGM/AGM-84 🇺🇸
巡航 / 配備 1977
米国製の対艦巡航ミサイル。海・空・陸・潜水艦から発射可能で、日本も含め 30 ヶ国以上で採用。海面すれすれを飛行するシースキマー(海面追従)が特徴。
※ 出典: 防衛白書 / FAS / IISS Military Balance 2024
3. 極超音速ミサイル
一言で:「マッハ 5 以上で機動する新世代の兵器。」
マッハ 5(音速の 5 倍)以上で飛行し、 落下中も軌道を変えられる「滑空体(HGV)」や、 空気を取り込み続ける「スクラムジェット(HCM)」が代表的。 既存の弾道ミサイル防衛では予測軌道を外れるため、迎撃が難しいと各国が懸念しています。

Wikimedia Commons / CC BY-SA
DF-17(東風 17) 🇨🇳
極超音速 / 配備 2019
中国の中距離弾道ミサイルに極超音速滑空体(HGV)DF-ZF を搭載した型。2019 年の建国 70 周年軍事パレードで公開された。落下中の機動で予測軌道を外せるとされ、防衛網突破を狙う設計。

Wikimedia Commons / CC BY 4.0
キンジャル Kh-47M2 🇷🇺
極超音速 / 配備 2017
ロシアが MiG-31K / Tu-22M3 から空中発射する極超音速級空対地ミサイル。地上発射型 9K720 イスカンデルを空中発射に転用したと分析されている。ウクライナ侵攻で実戦使用が確認されたが、迎撃事例も報告されている。

Wikimedia Commons / CC BY 4.0
ジルコン 3M22 🇷🇺
極超音速 / 配備 2023
ロシア海軍の艦載対艦・対地用極超音速巡航ミサイル。スクラムジェット(吸気式超音速エンジン)を採用し、フリゲート艦や潜水艦から発射されるとされる。実戦投入も報告されているが、性能の検証は進行中。
※ 出典: 防衛白書 / FAS / IISS Military Balance 2024
4. 空対空ミサイル(AAM)
一言で:「戦闘機が、別の航空機を撃ち落とすために積む武器。」
戦闘機の主武器。短距離(赤外線追尾)と中・長距離(レーダー誘導)に大別されます。 射程が伸び、視認外(BVR)からの撃ち合いが現代戦の主流。
U.S. Air Force / Public Domain
AIM-120D AMRAAM 🇺🇸
空対空 / 配備 1991
米空軍・海軍の中距離空対空ミサイルの標準装備。F-15 / F-16 / F/A-18 / F-22 / F-35 などほぼ全戦闘機が搭載する。日本の F-15J にも統合済み。
U.S. Air Force / Public Domain
AIM-9X サイドワインダー 🇺🇸
空対空 / 配備 2003
短距離格闘戦用の標準赤外線追尾ミサイル。最新型 Block II は撃ちっぱなし能力(LOAL)と高機動を備える。F-35 / F-15 / F-16 など多くの機体に搭載される。
PL-15 🇨🇳
空対空 / 配備 2017
中国空軍の長距離空対空ミサイル。J-20 / J-16 などに搭載され、ウエポンベイ収納のため胴体を短縮した派生型 PL-15E もあるとされる。BVR(視認外)戦闘での射程競争を象徴する一機。

Wikimedia Commons / CC BY-SA
R-37M 🇷🇺
空対空 / 配備 2014
ロシアの超長距離空対空ミサイル。MiG-31BM / Su-35S / Su-57 から発射される。AWACS(早期警戒機)や給油機など、後方の高価値目標を狙う設計とされる。
Wikimedia Commons / CC BY-SA
Meteor 🇪🇺
空対空 / 配備 2016
欧州 6 ヶ国(英・独・仏・伊・西・スウェーデン)共同開発。ラムジェット推進で長時間加速を維持し、終末段階の運動エネルギーが大きい点が特徴とされる。GCAP / ユーロファイター / ラファール / グリペンに搭載。
※ 出典: 防衛白書 / FAS / IISS Military Balance 2024
5. 地対空(防空・迎撃)ミサイル
一言で:「飛んできた航空機やミサイルを地上から撃ち落とす盾。」
SAM(Surface-to-Air Missile)。 航空機向けの「防空」用と、弾道ミサイル向けの「ミサイル防衛(BMD)」用に分かれます。 日本は、終末段階のパトリオット PAC-3 と、上層を担うイージス艦の SM-3 で多層防衛を組んでいます。
U.S. Air Force / Public Domain
パトリオット PAC-3 🇺🇸
地対空 / 配備 2003
弾道ミサイル迎撃に特化したパトリオットの最新型。爆風ではなく直接ぶつけて破壊する Hit-to-Kill 方式。航空自衛隊も全国に配備し、PAC-3 MSE(射程延伸型)への更新が進む。

U.S. Navy / Public Domain
RIM-161 SM-3 🇺🇸
地対空 / 配備 2004
イージス艦から発射する弾道ミサイル防衛(BMD)用の艦対空ミサイル。日米共同開発の Block IIA は射高・射程ともに大幅向上。海上自衛隊のイージス艦と協力するミサイル防衛の中核。

U.S. Army / Public Domain
THAAD 🇺🇸
地対空 / 配備 2008
Terminal High Altitude Area Defense。短・中距離弾道ミサイルを大気圏外〜上層大気で迎撃する陸上配備の高高度迎撃システム。米軍のほか韓国・UAE・サウジに配備。
U.S. Navy / Public Domain
SM-6(RIM-174) 🇺🇸
地対空 / 配備 2013
防空・対艦・終末段階の弾道迎撃をこなす多用途艦対空ミサイル。AMRAAM のシーカーを流用しており、長射程の防空を担う。日本もイージス艦への装備を進めている。
03 式中距離地対空誘導弾(中 SAM) 🇯🇵
地対空 / 配備 2003
陸上自衛隊高射特科の主力。航空機・巡航ミサイル迎撃を主任務とし、移動展開できる中距離防空システム。能力向上型(改)が量産配備されている。
※ 出典: 防衛白書 / FAS / IISS Military Balance 2024
6. 対艦ミサイル(ASM / SSM)
一言で:「艦艇を狙って、海上または陸・空・水中から放つ。」
航空機からはASM、地上からはSSM、 潜水艦からも発射されます。 島嶼防衛で重要視されており、日本は 12 式地対艦誘導弾の射程延伸を進めています。

JGSDF / Public Domain
12 式地対艦誘導弾 🇯🇵
対艦 / 配備 2012
陸上自衛隊の地対艦ミサイル。88 式地対艦誘導弾の後継として配備された。能力向上型では射程を大幅に延伸し、艦・航空機からも撃てるよう派生型の開発が進んでいる。

Wikimedia Commons / CC BY-SA
ハープーン(対艦型) 🇺🇸
対艦 / 配備 1977
海空陸潜の幅広い発射プラットフォームに対応する対艦ミサイル。海面追従飛行で発見を遅らせる。米同盟国の標準装備として広く採用される。
Wikimedia Commons / CC BY-SA
DF-26(対艦弾頭型) 🇨🇳
対艦 / 配備 2016
DF-26 のうち対艦弾頭を搭載する派生型。「対艦弾道ミサイル(ASBM)」の概念を拡張するもので、長距離での艦艇打撃を狙う設計とされる。実用性は外部から検証が難しい。
※ 出典: 防衛白書 / FAS / IISS Military Balance 2024
7. 戦術ミサイル
一言で:「戦場の前線で部隊が直接使う、比較的短射程のミサイル。」
戦線近くの目標(前線部隊・補給拠点・砲兵陣地)を 短時間で叩くための兵器。 戦術弾道ミサイルや多連装ロケットの誘導型などが含まれます。

U.S. Army / Public Domain
ATACMS(MGM-140) 🇺🇸
戦術 / 配備 1991
MLRS / HIMARS から発射する戦術短距離弾道ミサイル。前線後方の指揮所・補給拠点・砲兵陣地を狙う設計。後継の PrSM(精密打撃ミサイル)への更新が始まっている。
U.S. Air Force / Public Domain
AIM-9X サイドワインダー 🇺🇸
戦術 / 配備 2003
戦闘機の格闘戦用赤外線ミサイル。地上発射型に転用する派生(NASAMS 用)など、戦術運用の幅も広がっている。
※ 出典: 防衛白書 / FAS / IISS Military Balance 2024
出典: 防衛省「令和 6 年版 防衛白書」/ FAS(Federation of American Scientists)/ IISS「The Military Balance 2024」/ 各国国防省・メーカー公開資料 / Wikimedia Commons。 射程・速度は宣伝値・公開資料に基づく概数で、実戦値とは異なる場合があります。